問題集を単元ごとにまとめて解く「ブロック練習」より、複数の単元の問題を混ぜて解く「交互練習(インターリーブ)」のほうが、テストや実力テストでの成績につながりやすいと複数の教室実験で報告されています。単元別なら解けるのに、混ざると解法が浮かばなくなるのは、ブロック練習では「どの解法を使うか」を選ぶ経験や、同じ種類の問題の練習間隔をあける経験がほとんど積めないためだと考えられています。この記事では、そのしくみと、研究が示す数値、そして効果が出やすい条件・出にくい条件を整理します。

「ブロック練習」と「交互練習」とは何か

市販の数学の問題集の多くは、ある単元を習ったら、その単元に対応する問題が数十問続けて並ぶ構成になっています。同じ種類の問題をひとまとまりで練習するこの形を、学習科学ではブロック練習(blocked practice)と呼びます。これに対して、複数の単元の問題を意図的に混ぜて並べる練習を交互練習(interleaved practice、インターリーブ)と呼びます。Rohrer & Taylor(2007, Instructional Science, 35, 481–498)は、一部の教科書だけがこの「シャッフルされた」形式を採用しており、大半の教科書は直前の単元だけに問題が集中するブロック形式になっていると指摘しています。

核心:ブロック練習では「この問題にはこの解法」という対応関係があらかじめ分かった状態で解くため、解法を選ぶという工程そのものが省略されます。交互練習は、この工程を毎回要求します。

なぜ「混ぜる」と定着しやすくなるのか

単元ごとに問題を解いているとき、生徒は「今日の単元はこの解法」という前提のもとで問題に取り組んでいます。極端に言えば、問題文をきちんと読まなくても、直前に習った公式を当てはめれば正解できてしまう場面が少なくありません。しかし実際のテストでは、どの単元の、どの解法を使うべきかは問題文からしか判断できません。この「どの解法を選ぶか」を判断する学習は判別学習(discrimination learning)と呼ばれ、交互練習ではこの判別作業を練習のたびに繰り返すことになります。

Brunmair & Richter(2019, Psychological Bulletin, 145(11), 1029–1052)は、この現象を説明する枠組みとして、似た者同士を見分ける作業が学習を助けるとする「判別対比仮説」と、注意の向け方に着目する「注意バイアス仮説」を挙げています。これらの理論によれば、交互練習の効果は、カテゴリ間(単元と単元の間)の類似性が高く、見分けにくい教材ほど大きくなると予測されます。逆に言えば、判別対比の理論からは、見分けるまでもなく違いが明らかな問題では判別練習としての寄与は小さくなると予測されます(ただし後述のとおり、見た目が異なる数学問題でも効果が報告されています)。なお、交互練習では同じ種類の問題を解く間隔も自然に空くため、判別学習に加えて、練習の間隔を空けることで記憶の定着を助ける分散学習(spaced practice)の効果も寄与していると考えられています。ここまでの成績差を判別学習だけの効果として確定的に説明することはできません。

教室実験が示す数値

大学生の1週間後テスト(Rohrer & Taylor, 2007)

Rohrer & Taylor(2007)の実験2では、18名の大学生が4種類の見慣れない立体(くさび形・回転楕円体など)の体積の求め方を学習しました。練習問題をブロックで解いたグループ(ブロッカー)と、混ぜて解いたグループ(ミキサー)を比較したところ、練習中の正答率はブロッカーが89%、ミキサーが60%とブロッカーのほうが高い結果でした。ところが1週間後のテストでは、ミキサーの正答率63%に対し、ブロッカーは20%と結果が逆転しました(t(14) = 2.64, p < .05, d = 1.34)。練習中の解きやすさと、後になって思い出せるかどうかは別物だという点が、この研究の重要な示唆です。

中学1年生の教室実験(Rohrer, Dedrick & Stershic, 2015)

Rohrer, Dedrick & Stershic(2015, Journal of Educational Psychology, 107(3), 900–908)は、米国フロリダ州の公立中学校で126名の7年生(日本の中学1年生にあたる)を対象に教室実験を行いました。生徒は一次式のグラフを描く問題と、2点から傾きを求める問題という2種類の課題について、約3か月間・10回の宿題で交互練習とブロック練習の配置を操作し、最後は全員が同じ復習課題を解いたうえでテストを受けました。1日後のテストを受けた63名では交互練習80%対ブロック練習64%(d = 0.42)、別の63名が受けた30日後のテストでは交互練習74%対ブロック練習42%(d = 0.79)という結果でした(いずれも2種類の課題を合算した平均値)。30日という長い間隔をあけても交互練習側の得点低下は平均6ポイントにとどまっていますが、この2群は別々の生徒の平均値であり、練習方法と遅延期間の交互作用(差が広がるかどうか)は統計的には有意ではありませんでした(p = .09)。

787名の教室RCT(Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung, 2020)

Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung(2020, Journal of Educational Psychology, 112(1), 40–52)は、フロリダ州のある学区の54学級・787名の7年生を対象に、4か月間にわたる無作為化比較試験(クラスター・ランダム化)を実施しました。教師は特別な訓練を受けず、通常の宿題プリントの一部を交互練習またはブロック練習に差し替える形で実施されました。1か月後の予告なしテストでは、交互練習群61%対ブロック練習群38%(d = 0.83)という差が報告されています。規模の大きな教室実験であることから、著者らはこの結果を「効果は実際の教室でも実現可能」と位置づけています。

効果が出やすい条件・出にくい条件(Brunmair & Richter, 2019のメタ分析)

ここまでの結果だけを見ると交互練習は万能に思えますが、留保が必要です。Brunmair & Richter(2019)は59本の研究・238件の効果量を統合したメタ分析で、交互学習全体の効果量はHedges' g = 0.42(中程度)であったのに対し、数学課題に限ると g = 0.34 とやや小さく、視覚教材の中でも絵画(g = 0.67)ほど一貫して大きな効果は見られなかったと報告しています。ただし視覚教材の効果量は素材によって幅があり、自然写真は g = 0.35、人工的な図形は g = 0.31 と、数学課題(g = 0.34)と同程度かやや高い水準にとどまっており、「写真のような視覚教材全般が数学より大きく効く」とまでは言えません。さらに著者らは、単語や文法、外国語学習のような教材では交互練習がかえって学習を妨げる可能性もあるとして、数学を含むこれらの教材への交互練習の適用には慎重な姿勢を示しています。

同論文はその理由として、交互練習の効果は単元同士が表面的に似ているほど大きく、同じ単元内の問題同士が似ているほど小さくなるという傾向をメタ回帰分析で示しています。Rohrerらの一連の研究で使われた問題(似た形の立体の体積、似たグラフの傾きなど)は、まさに「一見似ているが解法が異なる」問題であり、交互練習が効きやすい条件に合致していたと解釈できます。ただし、これは研究間の相関に基づく傾向であり、個々の数学教材について効果の有無を一律に決める基準ではありません。同じRohrerらの2015年論文は、比例の文章題・一次方程式・グラフの作成のように見た目が大きく異なる数学問題を混ぜた先行研究(Rohrer, Dedrick, & Burgess, 2014)でも交互練習の効果(d = 1.05)が報告されていることを紹介しており、恩恵が見た目の似た問題だけに限定されるわけではないと考えられます。

愛媛の入試・定期テストへの翻訳

定期テストは単元ごとに出題範囲が区切られているため、ブロック練習に近い条件です。一方、実力テストや模試、そして入試本番は単元が混在した状態で出題されます。愛媛県の県立高校入試(全日制課程の一般入学者選抜)では、学力検査は各教科50点満点・合計250点満点で実施されるのが原則で、理数科・総合学科は傾斜配点を実施する場合に合計300点満点となります。これは愛媛県教育委員会「令和8年度愛媛県県立高等学校入学者選抜実施要項」の規定で、令和9年度の実施要項は令和8年10月頃に公表される予定のため、最新の資料で確認してください。出題範囲についても、愛媛県教育委員会の公表資料では「中学校学習指導要領に示されている各教科の目標及び内容に即し、基本的事項について出題する」とされており、特定の単元に限定されず中学校で学ぶ内容全体から出題されうる構成になっています。

つまり入試本番は、どの単元の、どの解法を使うべきかを問題文だけから自分で判別する場面そのものです。単元別の問題集だけを解いてきた生徒が、実力テストで急に解けなくなるのは、この判別を練習する機会が不足していたことの表れとも考えられます。過去問や模試を、単なる本番のリハーサルとしてだけでなく、「複数単元が混ざった状態で解法を選ぶ練習」として位置づけることには意味があるでしょう。

ソートアップでの取り組み

学習塾ソートアップでは、単元別の演習で解法の理解を一通り確認したあと、その単元だけで終わらせず、数回に1度の宿題プリントに前の単元の類題を1〜2問混ぜて出すようにしています。生徒が「今日はこの単元だから、この解法だろう」という前提なしに問題へ向き合う機会を、日常の宿題の中に少しずつ作る狙いです。

間違えた場合は、答えを直すだけでなく「どの単元の、どの解法を使うべきだったか」を生徒自身の言葉で確認するようにしています。学習塾コースでは、こうした演習の組み方を生徒の理解度に合わせて調整しています。無料体験授業で実際の指導スタイルをご確認いただけます。

よくある質問

交互練習(インターリーブ)とはどういう意味ですか?

同じ種類の問題をまとめて解く「ブロック練習」に対して、違う種類の問題を混ぜて解く練習方法のことです。問題集の多くは単元ごとにブロック練習の形で並んでいますが、一部の教材ではあえて複数の単元の問題を混ぜて配置しています。

混ぜて解くと、最初は正答率が下がりませんか?

下がる傾向が報告されています。Rohrer & Taylor(2007)の実験では、練習中の正答率はブロック練習の学生が89%、交互練習の学生が60%と、交互練習のほうが低くなりました。ただし1週間後のテストでは交互練習63%、ブロック練習20%と結果が逆転しており、練習中の解きやすさと後の定着は別物だと考えられます。

どんな問題集でも交互練習にすれば効果がありますか?

そうとは言えません。Brunmair & Richter(2019)のメタ分析では、数学の課題に対する交互練習の効果は統計的に有意ではあるものの平均的には小さめ(Hedges' g = 0.34)で、教材によっては効果がはっきりしない、あるいは逆効果になった研究もあると報告されています。効果が出やすいのは、一見似ている問題ほど違う解法を要求する場合だと考えられます。

家庭学習ではどうやって取り入れればいいですか?

単元の問題集を解き終えたら、その日のうちに全問正解を目指すのではなく、数日後にもう一度、前の単元の問題を1〜2問混ぜて解き直すことをおすすめします。模試や過去問のように単元名が書かれていない問題を解く機会を、ふだんの学習にも意図的に組み込む形です。

愛媛県の入試対策としても交互学習は有効ですか?

本番の学力検査は単元ごとに区切られておらず、中学校の学習内容全体から出題されるため、「どの単元の、どの解法を使うか」を自分で判別する力がそのまま問われます。過去問や実力テストで複数単元が混ざった問題に日常的に触れておくことは、この判別の練習として理にかなっていると考えられます。ただし得点を保証するものではなく、基礎知識そのものの定着が前提です。

高須賀 惇也(たかすか じゅんや)

学習塾ソートアップ 代表・講師。愛媛大学大学院 理工学研究科 博士後期課程在籍(教育工学・数理情報)。2014年2月、松山市内で開業(2025年7月に現在地の松山市東雲町へ移転)。元ソフトウェアエンジニア。現在は松山市東雲町で小1〜高3を個別指導。研究テーマは「生涯を通して関わるAIチューターの数理モデル」。