共通テスト「情報I」は、2025年度入試(令和7年度・2025年1月実施)から始まった新教科です。試験時間60分・100点満点・大問4問の全問必答で、学習指導要領「情報I」の4分野から出題されます。新しい教科だけに情報が錯綜しがちですが、本記事では大学入試センターと文部科学省の一次資料に基づき、出題範囲・配点・プログラミング表記・平均点の実態を整理します。
共通テスト「情報I」とは何か
「情報I」は、2025年度(令和7年度)の大学入学共通テストから新たに加わった出題科目です。その根拠は、平成30年告示の高等学校学習指導要領で「情報I」が共通必履修科目になったことにあります。すべての高校生が学ぶ科目になったため、共通テストでも出題されることになりました(大学入試センター「令和8年度大学入学共通テストQ&A」)。
試験の基本設計は、解答時間60分・100点満点・大問4問で、選択問題はなく全問必答です。出題範囲は学習指導要領の「情報I」全体に及びます。プログラミングというと身構える人も多いのですが、後述するように、特定のプログラミング言語の習得を前提としない設計になっている点が大きな特徴です。
位置づけの確認:「情報I」は文系・理系を問わず履修する共通必履修科目です。共通テストでの扱い(必須か選択か、配点をどうするか)は大学・学部ごとに異なるため、志望校の募集要項を一次情報として確認することが欠かせません。
出題される4分野
出題範囲は学習指導要領「情報I」の全体で、内容は次の4分野に分かれます(文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」情報I)。
- 情報社会の問題解決——情報モラル、知的財産、情報セキュリティの基礎など
- コミュニケーションと情報デザイン——情報の表現・伝達、デザインの考え方
- コンピュータとプログラミング——アルゴリズム、プログラム、モデル化とシミュレーション
- 情報通信ネットワークとデータの活用——ネットワークの仕組み、データの収集・分析・統計
注意したいのは、これら4分野が「均等に」出題されるわけではないという点です。文部科学省のサンプル問題はあくまで方向性を示すもので、同資料には「通常の問題作成・点検プロセスを経たものではなく、試験時間を考慮したものでもない」と明記されています(文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」情報I)。実際の重心は、次に見る試作問題の配点に表れています。
配点の重心——試作問題が示すもの
大学入試センターは2022年11月(令和4年11月)に「情報I」の試作問題と概要を公表しました(大学入試センター「試作問題『情報Ⅰ』の概要」令和4年)。この試作問題の分野別配点は、技術系分野に明確に重心が置かれています。情報処理学会による公式分析(情報処理学会, 2023, note)によれば、その内訳は次の通りです。
- 情報社会の問題解決:11.5点
- コミュニケーションと情報デザイン:11.5点
- コンピュータとプログラミング:46点
- 情報通信ネットワークとデータの活用:31点
つまり、プログラミング分野とデータ活用分野の2つで計77点、全体の約77%を占めます。情報処理学会の分析でも「全体として文章量が非常に多い」「より技術的な内容に重きが置かれている」と評価されています(情報処理学会, 2023, note)。
留保:ここで示した配点は試作問題のものです。実際の本試験の大問別配点は年度ごとに大学入試センターが公表する正解表で確認する必要があり、毎年同じとは限りません。試作問題の配点はあくまで「方向性を示す参考値」として読んでください。
プログラミングは独自の「DNCL」で出る
「情報I」で最も誤解されやすいのが、プログラミング問題の言語です。結論から言えば、Pythonなどの特定の言語では出題されません。高校の授業で多様な言語が使われている実情を踏まえ、受験者が初見でも理解できるよう設計された、大学入試センター独自の擬似言語「共通テスト用プログラム表記(DNCL:大学入学共通テスト手順記述標準言語)」が使われます(大学入試センター「令和8年度共通テストQ&A」・「DNCLの説明」令和4年)。
DNCLは日本語に近い表記で、条件分岐・繰り返し・配列・関数といった基本的な処理を記述できる試験専用の表記です。特定の言語の既習を前提としない一方で、これらの基本概念そのものを理解していないと読み解けません。なお、令和7年度試験からは改訂版の「共通テスト用プログラム表記(新DNCL)」が用いられており、旧来のDNCLとは文法が一部異なります(大学入試センター資料)。学習に際しては最新の表記仕様を確認してください。
言い換えれば、暗記すべき「文法」は少ない一方で、「アルゴリズムを読んで動きを追える力」「変数や配列の中身がどう変化するかを追跡できる力」が直接問われます。ここは一夜漬けが効きにくい領域です。
平均点の推移と難化の実態
初回の令和7年度(2025年1月実施)は、受験者数279,718名・平均点69.26点(100点満点換算・最終発表)でした。続く令和8年度(2026年1月実施)は、受験者数305,202名・平均点56.59点で、平均点は約12.67点も低下しています(いずれも大学入試センター「受験者数・平均点の推移」)。
この大幅な低下の一因として、令和8年度はマーク数が51から60へ増え、問題量そのものが増加した点が挙げられます。予備校の分析では、令和8年度の第3問で「関数処理と既存プログラムの修正」といった新要素が登場したとの指摘もあります(東進「共通テスト2026 情報Ⅰ全体概観」※予備校分析)。
留保:まだ2回しか実施されていない新科目であり、平均点は年度差が大きく、安定した推移は現時点では見通せません。「平均点が何点だから難しい/易しい」と単純化せず、過去問・試作問題の実物に触れて自分との距離を測ることをおすすめします。
なお、大学ごとの扱いも一様ではありません。河合塾の集計(リセマム, 2023年6月報道)では、2025年度入試で国立大学の約97%が「情報I」を必須とした一方、公立大学では必須が約44%にとどまり、選択扱いとする大学もありました。志望校がどう扱うかは、必ず各大学の募集要項で確認してください。
受験対策への翻訳——何から手をつけるか
以上の一次資料をふまえると、限られた時間で何を優先すべきかが見えてきます。点数を保証するものではありませんが、配点の重心と出題の性質から導ける現実的な方針は次の通りです。
1. プログラミングとデータ活用を軸に据える
試作問題では、この2分野で全体の約77%を占めました。本試験の配点は年度ごとに確認が必要ですが、技術系分野が重い傾向は方向性として一貫しています。まずアルゴリズムの読み取りと、表・グラフ・統計量(散布図・相関・箱ひげ図など)の解釈を確実にすることが、得点の土台になります。
2. DNCLは「読む練習」を反復する
暗記より、プログラムの動きを一行ずつ追う作業が効きます。変数や配列の中身を紙に書き出しながら追跡する「トレース」を、試作問題・過去問で繰り返すことが有効です。
3. 文章量の多さに慣れる
情報処理学会の分析でも文章量の多さが指摘されています。会話文や長い設定文から条件を読み取る形式が多いため、国語的な読解スピードも得点を左右します。時間配分の練習は早めに始めたいところです。
4. 一次資料の実物に当たる
大学入試センターは試作問題・参考問題・正解表、そして本試験の問題と統計データを公式に公開しています。塾ブログや要約記事ではなく、まず公式の問題そのものに触れることが、最も確実な現状把握になります。
ソートアップでの取り組み
学習塾ソートアップでは、高校生向けに情報系科目の指導も行っています。プログラミングの基礎概念(変数・条件分岐・繰り返し・配列・関数)を、暗記ではなく「動きを追って理解する」形で身につけることを重視しており、これはDNCLの読み取りにそのまま生きる力です。塾長自身が元ソフトウェアエンジニアであり、現在も愛媛大学大学院でAIと教育の研究に携わっているため、技術的な内容を入試の文脈に翻訳して説明できます。
「情報Iをどこから手をつければいいか分からない」という段階でも構いません。学習塾コースでは志望校の扱いに合わせた学習設計を一緒に考えます。プログラミングそのものを基礎から学びたい場合はプログラミング教室もあります。まずは無料体験授業で指導スタイルをご確認ください。
よくある質問
共通テスト「情報I」はいつから始まりましたか?
令和7年度(2025年1月実施)の大学入学共通テストから出題が始まりました。平成30年告示の高等学校学習指導要領で「情報I」が共通必履修科目となったことが根拠です(大学入試センター 令和8年度共通テストQ&A)。
情報Iのプログラミング問題はPythonで出ますか?
いいえ。特定の言語ではなく、大学入試センター独自の擬似言語「共通テスト用プログラム表記(DNCL)」が使われます。高校で多様な言語が使われている事情を踏まえ、受験者が初見でも読めるよう設計された試験専用の表記です(大学入試センター 令和8年度共通テストQ&A・DNCLの説明 令和4年)。
情報Iの配点はどの分野が高いですか?
令和4年11月公表の試作問題では、コンピュータとプログラミングが46点、情報通信ネットワークとデータの活用が31点と、この2分野で計77点(全体の77%)を占めました。ただしこれは試作問題の配点であり、本試験の大問別配点は年度ごとに公表される正解表で確認する必要があります(大学入試センター 試作問題の概要 令和4年)。
情報Iの平均点はどのくらいですか?
令和7年度(2025年1月)の最終平均点は69.26点、令和8年度(2026年1月)は56.59点でした(いずれも100点満点換算・大学入試センター公式)。令和8年度はマーク数が51から60に増えるなど問題量が増加したことが一因とされ、年度差が大きい点に注意が必要です。
情報Iはすべての大学で必要ですか?
大学・学部によって扱いが異なります。河合塾の集計(リセマム 2023年6月報道)では、2025年度入試で国立大学の約97%が必須とした一方、公立大学では必須が約44%にとどまりました。扱いは大学・学部によって異なるため、志望校の募集要項を必ず確認してください。