「問題を見たらすぐ計算を始めてしまい、途中で詰まる」——数学を教えていて最もよく見るパターンです。この問題の根本にあるのは「メタ認知」の不足です。メタ認知を育てることが、考える力を身につけるための最初のステップになります。

メタ認知とは何か

メタ認知(Metacognition)とは、「自分の認知プロセスを客観的に観察・評価・制御する能力」のことです。1970年代に認知心理学者のジョン・フラベル(John Flavell)が提唱した概念で、「自分が何を知っていて、何を知らないかを知っている力」とも言い換えられます。

具体的には次の2つの側面があります。

学習科学の研究では、メタ認知能力の高い学習者は、新しい問題に対応する力や学習の自律性が高いことが示されています(Zimmerman, 2002 など)。メタ認知は、試験の点数だけでなく「考える力」「自分で学ぶ力」の核心にあります。

問題を解く前にすべき4ステップ

問題を解き始める前に、次の4つのステップを頭の中で踏むことを習慣にすることで、メタ認知的な問題解決のサイクルが身につきます。

1

問題を読んで「何を求めているか」を言語化する

「答えは何か」ではなく「この問題が要求しているのは〇〇だ」と一度言葉にします。数学なら「最大値を求めよ」、英語なら「空欄に入る語句を選べ」という指示を意識的に確認します。読み飛ばしやケアレスミスの多くは、このステップの不足から生まれます。

2

既知の知識・解法を検索する

「この問題に似た問題を以前やったことがあるか」「使えそうな公式・知識は何か」を頭の中で探します。ゼロから考えるのではなく、自分の知識のストックと照合する作業です。このステップが「解法の見当をつける」時間です。

3

解法プランを立てる(やること の順序を決める)

「まず〇〇をして、次に〇〇をする」というプランを立てます。問題を解き始める前に、大まかな手順を決めておくことで、途中で詰まったときに「どこで計画が崩れたか」を振り返ることができます。

4

解きながら「今どこにいるか」を確認する(モニタリング)

解答の途中で定期的に立ち止まり、「今やっていることは目的に向かっているか」「おかしな結果が出ていないか」を確認します。計算が終わったとき、「この答えは問題に照らして妥当か(桁数・符号・単位など)」を確認することもモニタリングの一部です。

数学が苦手な生徒に多い「即計算開始」問題

数学の個別指導をしていると、苦手な生徒に共通するパターンがあります。問題を見た瞬間に計算を始めることです。

「とりあえず計算してみる」という姿勢は悪いものではありませんが、問題の意図を把握せずに動き始めると、次のような状況が生まれます。

これらの問題に共通しているのは、「解く前に考えていない」ことです。問題と向き合う時間——読んで、既知の知識と照合して、プランを立てる——この1〜3分を惜しまないことが、結果として時間の節約になります。

試験での時間管理にも直結します:難問に直面したとき「なんとなく計算し続ける」のではなく「プランが立たないから一度飛ばして次へ行く」という判断ができるのも、メタ認知的モニタリングの力です。

メタ認知を育てる声がけ・問いかけ

メタ認知は、適切な問いかけによって育てることができます。以下は、個別指導での実際の対話の例です。

実際の対話例(数学・方程式)
先生 この問題、まず何を求めるか言える?
生徒 xの値…ですか?
先生 そう。じゃあ使えそうな方法を1つ思い浮かべてみて。
生徒 移項して…両辺を整理してみます。
先生 いいね。じゃあやってみて。途中で「あれ?」と思ったら一度止まって。

このような問いかけのポイントは「答えを教えない」ことです。先生が方向を示すのではなく、生徒が自分で「次に何をするか」を決める機会を作ることで、メタ認知的な思考習慣が少しずつ身についていきます。

よく使う問いかけのバリエーションをいくつか示します。

保護者が家庭でできるサポート

メタ認知を育てる声がけは、家庭でも実践できます。ただし「答えを教える」ことと混同しないようにすることが大切です。

お子様が宿題で詰まっているとき、答えを教える前に「どこで詰まってる?」と聞いてみてください。「ここまではわかるんだけど、ここから先がわからない」と言えるなら、問題の所在を自分で特定できています。「全部わからない」という場合は「最初の一行は読めた?何が書いてある?」と細分化して聞いてみましょう。

答えを渡すより時間がかかりますが、「自分でどこが問題か見つける」経験の積み重ねが、長期的な考える力につながります。

ソートアップでの実践

学習塾ソートアップの個別指導では、「何を考えてその式を立てた?」「どこで迷った?」という問いかけを授業の中心に置いています。生徒が自分の思考プロセスを言語化できるようになることを、短期的な点数向上と同様に重要な目標として位置づけています。

こうした指導は、教育工学研究の知見を実際の授業設計に活かす取り組みの一つです。松山市東雲・道後エリアで、考える力を育てる個別指導を受けてみたい方は、無料体験授業または学習塾コースの詳細をご覧ください。

高須賀 惇也(たかすか じゅんや)

学習塾ソートアップ 代表・講師。愛媛大学大学院 理工学研究科 博士後期課程在籍(教育工学・数理情報)。2014年2月開業。元ソフトウェアエンジニア。松山市東雲町で小1〜高3を個別指導。研究テーマは「生涯を通して関わるAIチューターの数理モデル」。

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