総合型選抜・学校推薦型選抜は「学力不問の早く決まる入試」ではなく、文部科学省の実施要項で学力を評価する方法を必ず一つ以上使うことが定められた選抜です。出願・合格発表の時期も一般選抜より早い時期に規定されている一方、調査書や活動報告書には高1からの積み上げが反映されます。この記事では制度の枠組みを一次資料から整理し、高1・高2のうちにできる準備の考え方をまとめます。

総合型選抜・学校推薦型選抜とは何か

大学入学者選抜は、文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日付け8文科高第318号文部科学省高等教育局長通知)によって、全国の大学に共通する枠組みが毎年度示されています。同要項は、選抜方法を一般選抜・総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜(旧推薦入試)の3区分に整理しています。

区分出願の主体評価の重点
一般選抜入学志願者本人の意志で出願学力検査、小論文等を主な資料とする
総合型選抜入学志願者本人の意志で出願(公募制)詳細な書類審査と時間をかけた面接等を組み合わせ、能力・適性や学習意欲、目的意識等を総合的に評価
学校推薦型選抜出身高等学校長の推薦に基づく(本人の意志のみでは出願できない)調査書を主な資料としつつ、大学が定める推薦要件に照らして評価

同要項は総合型選抜を「一般選抜とは異なる観点や方法により評価を行うという前提のもと、詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法」と定義しています。学校推薦型選抜については「特定の大学・学部等で教育を受けるにふさわしい能力・意欲・適性等を有する入学志願者を高等学校長が判断するものであることから、推薦要件を可能な限り具体的に設定し、募集要項等により示さなければならない」とされ、本人の意志だけで出願できる一般選抜・総合型選抜とは出願の成り立ちが異なります。

核心:3区分の違いは「入試科目が何か」ではなく、「誰の意志で出願し、何を主な資料として、どういう観点で評価するか」という制度設計の違いです。学力検査があるかないかで単純に線引きできるものではありません。

「学力不問」「早く決まる=楽」という誤解

総合型選抜・学校推薦型選抜には、大きく2つの誤解がつきまといます。

誤解1:学力は問われない

実施要項は、総合型選抜・学校推薦型選抜のどちらについても「言語能力及び数理的思考力を含め大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力等も適切に評価するため、調査書等の出願書類だけではなく、第6の1から4に掲げる評価方法のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し、その旨を募集要項に記載する」と定めています。「第6の1から4」とは、教科・科目に係る個別テスト、大学入学共通テストの利用、小論文・面接・実技検査等、資格・検定試験等の成績の活用の4種類で、いずれかを大学が独自に選び学力を評価することが必須要件です。加えて、志望する学問分野への意欲や適性等に係る面接(オンライン実施を含む)を行うことが原則として必ず求められています。ただし学校推薦型選抜については、高等学校との緊密な連携により意欲や適性等を含め丁寧なマッチングが図られていると考えられる非公募型の選抜で、合格した際には入学することを入学志願者が確約して受験するものに限り、大学の実情に応じて面接の要否を判断できるとされています。

誤解2:早く決まる=準備が楽

出願・合格発表の時期にも規定があります。令和9年度選抜(2027年春入学)では、総合型選抜は入学願書受付を令和8年9月1日以降、判定結果を令和8年11月1日以降に発表、学校推薦型選抜は入学願書受付を令和8年11月1日以降、判定結果を令和8年12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで(大学入学共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日)に発表するとされています。教科・科目や評価方法など入試方法等の基本的な事項は令和8年5月27日から7月31日までに、募集要項自体は令和8年12月15日までに発表される決まりです。具体的な月日は年度ごとの実施要項で定められるため実際に出願する年度の要項で確認する必要がありますが、一般選抜より早く選考が進む点は共通しています。総合型選抜・学校推薦型選抜とも、要項は出願より前に発表されるため、志望校が固まったら早めに募集要項を確認することをおすすめします。

ただし、これは「短期間の対策で決まる」ことを意味しません。総合型選抜では活動報告書や大学入学希望理由書・学修計画書といった志願者本人が記載する資料の活用が求められ、学校推薦型選抜では出身高校長による推薦要件の判断や調査書の学習成績の状況が重視されます。いずれも出願時点までに積み上げてきた記録が土台になる点で、一般選抜と同様に時間のかかる準備が必要です。

数字で見る選抜区分別の入学者割合

文部科学省「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」の入学者数(令和7年5月1日現在の集計)から、選抜区分別の割合を機械的に算出すると次のとおりです。

区分全体国公立大学私立大学
一般選抜46.3%76.3%38.3%
総合型選抜19.5%7.3%22.8%
学校推薦型選抜34.1%16.5%38.8%

全国計では、総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた入学者が全体の半分以上(約53.7%)を占めています。ただし国公立大学と私立大学では傾向が大きく異なり、国公立大学では一般選抜が76.3%を占めるのに対し、私立大学では一般選抜が38.3%にとどまり、学校推薦型選抜(38.8%)とほぼ並ぶ水準です。「総合型・推薦が主流になっている」かどうかは、志望が国公立か私立かによっても実感が変わる、ということがこの数字から読み取れます。

読み違えやすい点:「総合型・推薦の入学者が多い」ことと「学力が問われていない」ことは別の話です。前の節で見たとおり、実施要項はどちらの選抜区分にも学力評価の活用を義務付けています。割合の大きさを、対策の軽さと同一視しないよう注意が必要です。

高1から高3までの時間軸

総合型選抜・学校推薦型選抜で使われる資料の多くは、出願直前の数か月だけで作れるものではありません。出願時点までに積み上がってきた記録が、そのまま資料になります。

高1・高2の間にできることは、特定の1校に照準を絞った対策ではなく、教科の学習を土台にしながら、興味を持った分野の探究活動や課外活動に継続して取り組み、その記録を残しておくことです。志望校・志望学部が固まっていない時期でも、この積み上げ自体は無駄になりません。

愛媛・松山への翻訳

愛媛大学は、大学入学共通テストを課さない総合型選抜Ⅰと課す総合型選抜Ⅱ、大学入学共通テストを課さない学校推薦型選抜Ⅰと課す学校推薦型選抜Ⅱを、学部ごとに実施しています(大学公式サイトの入試情報で確認)。松山大学も、総合型選抜と学校推薦型選抜(成績優秀者・各種活動優秀者等の区分)を実施しています。どちらの大学も、実施学部・出願要件・評価方法・共通テストの要否は学部・年度によって異なるため、詳細は必ず各大学が発表する最新の募集要項で確認してください。この記事では「愛媛・松山の大学も総合型選抜・学校推薦型選抜を実施している」という制度上の事実までを扱い、配点や具体的な出願資格には立ち入りません。

ソートアップでの取り組み

学習塾ソートアップでは、高1の面談で、一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜という3つの枠組みを最初に共有し、それぞれで何が資料になるのかを生徒・保護者と一緒に整理するようにしています。「推薦は学力が要らない」「まだ高1だから受験は先」という受け止め方のまま高2・高3を迎えると、活動報告書に書ける記録や評定の積み上げが手薄なまま出願時期を迎えることになりかねないためです。

学習塾コースでは、教科の学習設計とあわせて、こうした進路情報の整理も行っています。無料体験授業で実際の指導スタイルをご確認いただけます。

よくある質問

評定平均はいくつ必要ですか?

文部科学省の実施要項には全国一律の評定平均の基準はありません。総合型選抜・学校推薦型選抜とも、出願要件や評価における調査書の使い方は大学・学部ごとに募集要項で定められ、年度によって変わることもあります。志望する大学の最新の募集要項で確認することをおすすめします。

総合型選抜・学校推薦型選抜に落ちたら一般選抜に出願できますか?

出願できるかどうかは、実施要項ではなく各大学の募集要項が定める条件次第です。ここで区別すべきは「専願か併願可能か」と「公募か非公募か」で、これらは別の軸です。専願は合格した際に入学することを確約する出願条件、非公募は出身高校からの推薦等によって出願できる対象者を限定する仕組みを指します。総合型選抜・学校推薦型選抜が不合格になった場合、一般選抜の出願資格・期限等を満たせば通常は出願できますが、合格時の入学確約や出願期間中の併願制限とは別の問題として扱われます。専願か併願可能かは出願前に必ず募集要項で確認してください。

総合型選抜・学校推薦型選抜でも共通テストは必要ですか?

実施要項が必須化しているのは「学力を適切に評価する方法を少なくとも一つ活用すること」であり、大学入学共通テストの利用そのものを義務付けているわけではありません。教科・科目に係る個別テスト、小論文、資格・検定試験の活用など、共通テスト以外の方法で学力を評価する大学もあります。共通テストを課すかどうかは大学・選抜区分ごとに異なるため、募集要項での確認が必要です。

部活動や資格は有利になりますか?

活動報告書や調査書に記載され、評価の材料の一つにはなり得ますが、それだけで合否が決まるわけではありません。実施要項では、活動歴等に加えて知識・技能、思考力・判断力・表現力等をあわせて評価することが求められています。有利に働くかどうかや重み付けは大学のアドミッション・ポリシーと選考方法次第です。

高須賀 惇也(たかすか じゅんや)

学習塾ソートアップ 代表・講師。愛媛大学大学院 理工学研究科 博士後期課程在籍(教育工学・数理情報)。2014年2月、松山市内で開業(2025年7月に現在地の松山市東雲町へ移転)。元ソフトウェアエンジニア。現在は松山市東雲町で小1〜高3を個別指導。研究テーマは「生涯を通して関わるAIチューターの数理モデル」。