愛媛県の高校生向け学費支援には、貸与型・給付型・授業料充当型の3つの制度があり、貸与型の「予約採用」だけは中学3年生の秋のうちに手続きが必要です。愛媛県教育委員会と文部科学省の公表資料から、いつ・どこに・何を申し込むのかを整理します。
高校の学費を支える3つの制度
愛媛県内の高校(高等学校・中等教育学校後期課程・高等専門学校・専修学校の高等課程等)に通う生徒が利用できる公的な学費支援は、性格の異なる3つの制度に分かれています。
- 愛媛県奨学生(貸与型):愛媛県教育委員会が愛媛県奨学資金貸与条例に基づいて実施。使い道を授業料に限定せず、毎月一定額を貸し付け、卒業後に返還する(愛媛県教育委員会「愛媛県奨学生(愛媛県奨学資金制度)について」)
- 高校生等奨学のための給付金(給付型):愛媛県が実施(公立は県教育委員会 教育総務課施設厚生室、私立は県総務部総務管理局 私学文書課が担当)。低所得世帯や一定の所得割課税世帯を対象に、授業料以外の教育費(教材費等)に充てる資金を給付。返済は不要(愛媛県教育委員会「愛媛県公立高等学校等奨学のための給付金について」、愛媛県「愛媛県私立高等学校等奨学のための給付金について(私立用)」)
- 高等学校等就学支援金(授業料充当型):国の制度。授業料に充てる資金が学校側に支給され、実質的に授業料が下がる形になる。返済は不要(文部科学省「高等学校等就学支援金制度」)
核心:この3つのうち、中学3年生の秋に動く必要があるのは愛媛県奨学生の「予約採用」だけです。就学支援金と奨学のための給付金は、いずれも高校入学後に学校を通じて申請する制度です。
なぜ中3の秋に動く必要があるのか——予約採用とは
愛媛県奨学生は、進学予定者向けの予約採用、在学中に申し込む在学採用、家計急変時の緊急採用の3区分で募集されます(愛媛県教育委員会「奨学生の募集・採用」)。このうち予約採用の対象は「高等学校等へ進学希望の中学3年生等」で、募集時期は進学前年度の10月頃、選考結果の通知は前年度2月頃、正式な採用決定は進学した年の5月とされています。直近の実施では、2026年4月に高校へ進学する生徒向けの予約採用が2025年10月10日に募集開始され、2025年12月6日に愛媛県教育委員会のページで「予約採用の募集は終了しました」と告知されました(同ページ「募集・採用関係のお知らせ」)。この12月6日は県への出願受付が締め切られたことを知らせる告知日で、生徒本人が書類を学校へ提出する期限はこれより前に学校ごとに指定されます。出願から貸与終了までの手続きはすべて在学校を通じて行うため、期限は必ず在学校(中学校)の指示で確認してください。
2027年4月に高校へ進学する現在の中学3年生向けの予約採用は、本稿執筆時点(2026年9月)ではまだ募集が始まっていません。過去の実施時期から見て2026年10月頃に募集が始まる可能性が高いですが、正式な開始日は愛媛県教育委員会のウェブサイト「愛媛県奨学生」で確認する必要があります。
入学後に申し込む在学採用という選択肢もありますが、募集時期は毎年6月頃、初回の振込は9月頃です。予約採用なら採用された年の4月分から遡って5月にまとめて振り込まれるため、早く動くほど支給が始まるまでの空白期間が短くなります。
予約採用の手続きの流れ
出願から貸与終了までの手続きは、すべて在学する学校(中学校、採用後は高校)を通じて行います(愛媛県教育委員会「奨学生の募集・採用」)。おおまかな流れは次のとおりです。
- 学校で「愛媛県奨学生願書」等の書類を受け取る
- 住民票、課税証明書等の必要書類を揃え、学校が指示する期限までに学校へ提出する
- 愛媛県奨学生選考委員会による選考(人物・健康・学力の基準と、家計基準の両方を満たす必要がある)
- 前年度2月頃に選考結果を通知、進学後5月に正式採用、初回は4・5月分をまとめて5月25日頃に振込
出願資格として、保護者が愛媛県内に居住していること、学費の支弁が困難であること、日本学生支援機構の貸与型奨学金など特定の学資金の貸与を重複して受けていないことなどが定められています。書類の提出方法・期限は学校ごとに異なるため、必ず在学校の指示に従う必要があります。
貸与額・給付額・支給額はいくらか
愛媛県奨学生(貸与型)の貸与月額
設置者(国公立・私立)と通学形態(自宅・自宅外)の区分ごとに、次の月額から選ぶことができます(愛媛県教育委員会「奨学資金の貸与」)。
| 設置者・通学形態 | 選択できる月額 |
|---|---|
| 国公立・自宅通学 | 5千円/1万円/1万5千円/1万8千円 |
| 国公立・自宅外通学 | 5千円/1万円/1万5千円/2万円/2万3千円 |
| 私立・自宅通学 | 5千円/1万円/1万5千円/2万円/2万5千円/3万円 |
| 私立・自宅外通学 | 5千円/1万円/1万5千円/2万円/2万5千円/3万円/3万5千円 |
家計基準は、家計支持者(原則として父と母の2人)の審査所得額の合計が189,400円以下であることです。世帯年収の目安は、給与所得者の場合で777万円(2人世帯)〜972万円(5人世帯)、給与所得者以外の場合で559万円〜678万円とされています(愛媛県教育委員会「奨学生の募集・採用」)。
貸与は無利息ですが、貸与終了後に15回以内の年賦(年1回払い)で全額を返還する必要があります。1回あたりの返還額は貸与月額と正規の修業期間で決まり、例えば高校全日制(3年間)で月1万円を借りた場合の年賦額は3万円です(愛媛県教育委員会「奨学資金の返還額と返還回数」)。
高等学校等就学支援金(授業料充当型)
令和8年度(2026年度)から所得制限が撤廃され、世帯年収にかかわらず、授業料に充てる資金が公立高校の全日制で年118,800円(月9,900円)、公立の定時制で年32,400円、公立の通信制で年6,240円、私立高校で年457,200円(月38,100円、私立通信制は年337,200円)を上限に支給されます(文部科学省「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律の施行等について」令和8年3月31日付通知、同省「高等学校等就学支援金等」資料)。この改正は令和8年4月1日に施行され、それ以降にこの制度の対象校種に在学する生徒が対象です。ただし所得制限がない代わりに、日本国内に住所があり日本国籍者・永住者等の一定の在留資格要件を満たすことなどが条件で、この要件を満たさない場合、在校生(留学生を含む)には旧制度の支援を続ける経過措置が、新入生(留学生を除く)には旧制度と同等の水準の予算措置が用意されています。なお上記の上限額は定額授業料の場合で、単位制授業料の学校では単位あたりの限度額(公立全日制4,812円/単位など)で別に計算されます。2027年4月に高校へ進学する現在の中学3年生も、対象校種に在学し在留資格等の要件を満たせば、この新制度の対象になります。
なお、令和7年度(2025年度)までの旧制度は世帯年収910万円未満を対象とし、年収590万円未満の世帯は私立で年396,000円、590万円〜910万円未満の世帯は公私共通で年118,800円が上限、910万円以上の世帯は対象外という段階的な仕組みでした(同資料)。ただし令和7年度に限っては、この所得制限で対象外となった年収約910万円以上の世帯にも、別事業の「高校生等臨時支援金」により年118,800円を上限とする支援がありました(文部科学省「高等学校等就学支援金/高校生等臨時支援金」令和7年度版案内)。
高校生等奨学のための給付金(給付型)
住民税所得割が非課税の世帯等に加え、一定の所得割課税世帯も対象になります。公立高校(全日制)の場合、非課税世帯で年143,700円、生活保護世帯で年32,300円、所得割の合算額が105,500円未満の課税世帯で年47,900円、105,500円以上182,500円未満の課税世帯で年35,930円(課税世帯の2区分は、就学支援金制度等で旧制度が適用される生徒は対象外)などの金額が世帯の課税状況に応じて定められており、私立高校の場合はそれぞれ年152,000円、年52,600円、年50,670円、年38,000円です(愛媛県教育委員会「愛媛県公立高等学校等奨学のための給付金について」、愛媛県「愛媛県私立高等学校等奨学のための給付金について(私立用)」)。世帯構成や課程(全日制・通信制・専攻科)によって金額が細かく分かれるため、正確な額は各公式ページの表で確認することをおすすめします。
核心:奨学金は「借りて返す」もの(愛媛県奨学生)と「返さなくてよい」もの(就学支援金・奨学のための給付金)に分かれます。2027年4月進学者にとっては、就学支援金が所得制限のない新制度の対象になる点が、これまでと大きく変わったところです。
松山の家庭にとっての意味——公立と私立で何が変わるか
3つの制度の金額だけを比べると、公立と私立で支援の厚みが異なることが分かります。就学支援金の上限額は定額授業料の場合で公立の全日制が年118,800円、私立が年457,200円です。私立の上限額は「私立高校の平均授業料を勘案した水準」とされており(文部科学省「高等学校等就学支援金等」資料)、この上限額と実際の授業料との差額が自己負担になります。愛媛県奨学生(貸与型)は使い道を授業料に限定していないため、通学費や教材費など授業料以外の負担にも充てられますが、貸与である以上、卒業後の返還を前提に借入額を考える必要があります。
松山市内の公立・私立を問わず、進路を決める段階では「授業料がいくら支援されるか」だけでなく、「返さなくてよいお金でどこまでまかなえ、足りない分をどう補うか」を家庭ごとに整理しておくことが、入学後の負担感を左右します。
ソートアップでの取り組み
学習塾ソートアップでは、中3の保護者面談で、愛媛県教育委員会や文部科学省の公表資料を実際に開きながら、予約採用の時期と就学支援金の仕組みを一緒に確認するようにしています。奨学金の情報は伝聞で伝わりやすく、貸与型と給付型が混同されたまま「うちは対象外」と思い込んでしまう例も見られるためです。
進路の情報整理は、志望校選びや学習計画とあわせて行っています。学習塾コースでは、日々の学習設計とあわせて進路面談も行っています。無料体験授業で実際の指導スタイルをご確認いただけます。
よくある質問
愛媛県奨学生の予約採用の申込を逃してしまったら、もう申し込めませんか?
高校入学後に申し込む「在学採用」があります。募集時期は毎年6月頃で、9月に採用が決定し、初回は4〜9月分をまとめて9月25日頃に振り込まれます(愛媛県教育委員会「奨学生の募集・採用」)。予約採用より支給が始まる時期が遅くなる点には注意が必要です。
愛媛県奨学生(貸与型)と、就学支援金や奨学のための給付金は同時に使えますか?
愛媛県奨学生の出願資格では、日本学生支援機構の貸与型奨学金など特定の学資金の貸与等を受けていないことが条件とされていますが、この除外リストに就学支援金や奨学のための給付金は含まれていません(愛媛県教育委員会「奨学生の募集・採用」)。そのため、各制度の支給要件を満たすことが前提ですが、原則としてこの3つの制度は併用できると考えられます(「併用可」と明示した一次資料は確認できていません)。
私立高校に進学しても、これらの制度は使えますか?
使えます。愛媛県奨学生の貸与月額表には私立・自宅通学、私立・自宅外通学の区分があり、就学支援金にも私立高校向けの上限額(年457,200円、通信制は337,200円)が、奨学のための給付金にも私立版が設けられています(愛媛県教育委員会、文部科学省の各公表資料)。
この中で、返さなくていいお金はどれですか?
高等学校等就学支援金と、高校生等奨学のための給付金は返済不要の給付型です。愛媛県奨学生は無利息ですが貸与型で、卒業後に15回以内の年賦(年1回払い)で全額を返還する必要があります(愛媛県教育委員会「奨学資金の返還額と返還回数」)。