高校選びは学力の順位より先に、学科の型と選抜方式との相性を確かめると整理しやすくなります。愛媛県の県立高校では第2選抜のA:B:C比率が学校ごとに違うため、同じ内申点・同じ当日点でも受ける学校によって順位の付き方が変わります。この記事では、中予地区の県立高校を例に、公表資料から読み取れる選び方の観点を整理します。

松山圏で選べる高校には、どんな型があるか

高校選びは「偏差値の上から順に並べる」作業だと思われがちですが、実際にはまず学科の型を決めるほうが選択肢を整理しやすくなります。中予地区の県立高校(全日制)には、普通科のほかに理数科・工業科・商業科・総合学科・情報科・芸術科などが置かれています。

令和8年度の募集を例にとると、松山東は普通科、松山南は本校に普通科と理数科・砥部分校にデザイン科、松山北は本校と中島分校に普通科、松山中央は普通科、松山工業は工業科、松山商業は商業科、東温は総合学科、伊予は普通科・理数情報科・芸術科という構成でした(愛媛県教育委員会「令和8年度愛媛県県立高等学校入学者募集要項」別表による)。

核心:総合学科や専門学科は「普通科に入れなかったときの選択肢」ではなく、学ぶ内容と時間の使い方が最初から違う別の型です。3年間で何に時間を使いたいかから考えるほうが、入学後のミスマッチが起きにくくなります。

入り口は2つある——特色入学者選抜と一般入学者選抜

愛媛県の県立高校入試には、特色入学者選抜一般入学者選抜の2つの入り口があります。特色入学者選抜は各校が作文・小論文・面接・集団討論・実技・プレゼンテーションから検査を選んで実施するもので、募集枠には上限が定められています。普通科等(普通科とのくくり募集をする学科を含みます)は30%程度、職業教育を主とする学科(同じくくり募集を除きます)と総合学科は50%程度、体育科・芸術科は100%が上限です(愛媛県教育委員会「令和8年度愛媛県県立高等学校入学者選抜実施要項」)。

実際の枠は学校ごとに上限より小さく設定されることが多く、令和9年度(2027年春)入試について公表されている資料では、松山東 普通科が定員360人に対して13%程度(47人程度)、松山南 本校普通科が定員320人に対して10%程度(32人程度)、松山北 本校普通科と松山中央 普通科がいずれも定員360人に対して20%程度(72人程度)とされています(愛媛県教育委員会「令和9年度県立高等学校入学者選抜 特色入学者選抜 各校の出願資格及び検査項目等について」令和8年5月22日更新。人数は振興計画等に示された定員に対する割合で算出されたもので、令和9年度の募集定員は令和8年10月頃に公表される予定と同資料に記されています)。同じ「特色」でも、学校によって門の広さがかなり違うことが分かります。

出願資格も各校が独自に定めており、学校が違えば求められるものも変わります。同じ資料によると、松山東 普通科は次の1〜5の全てに該当することが条件です。1. 志願する動機や理由が明確で適切であること、2. アドミッション・ポリシーである「三立」(学業・部活動・学校行事の全てを充実させる努力)の意義を理解し、高いレベルで取り組む強い意志があること、3. 基本的生活習慣が身に付き、思いやりと責任を持って粘り強く取り組めること、4. 中学校における学習の成績が優秀で、入学後も旺盛な向学心を持って学習に励み成果が期待できること、5. 「特別活動・ボランティア活動等に継続して熱心に取り組み、リーダーシップを発揮して優れた成果を上げた者」または「校内外のスポーツ・文化活動に継続して熱心に取り組み、全国大会もしくはそれに準ずる大会等に出場して成果を上げた者、あるいはその分野で優れた資質や高い運動能力を有する者」のいずれかであること。

一方、松山南 本校普通科は次の1・2の両方に該当することが条件です。1. 第1学年から第3学年の9教科の成績が特に優秀であること、2.「校内外の特別活動等に優れた実績があり、入学後の部活動・生徒会活動・ボランティア活動等でリーダーシップの発揮が期待できること」「英検・漢検・数検のいずれかで準2級以上、または同等の資格を有していること」「校内外の文化・スポーツ活動で県大会ベスト4以上相当の成績を収めるか優れた能力を有し、入学後も本校の部活動で積極的に活動する意志があること」のいずれかに該当すること。検定や大会成績の条件は学校によって有無も水準も違うため、志望校の該当ページを必ず直接確認してください。

同じ持ち点でも、学校によって有利不利が変わる

一般入学者選抜は二段階で行われ、第2選抜では A(学力検査)・B(調査書点)・C(調査書の学習記録以外+面接等)の3つを合計500点満点に換算して選抜します。このとき使うA:B:C の比率は学校・学科ごとに定められ、事前に公表されます(合計10、A は3〜6、B と C は2〜4の整数)。

令和8年度の中予地区では、松山東 普通科・松山南 本校普通科と理数科・松山北 本校普通科が 6:2:2、松山中央 普通科・松山工業・松山商業が 4:3:3、東温 総合学科や松山北 中島分校が 3:3:4 でした(同「募集要項」別表2)。

比率が変わると、換算後の満点そのものが変わります。

つまり、同じ内申点・同じ当日点の生徒でも、受ける学校によって順位の付き方が変わります。内申が思うように伸びなかった生徒にとっては当日点の比重が高い学校のほうが挽回の余地が大きく、逆に日々の積み上げが得意な生徒は調査書の比重が高い学校で力を発揮しやすい、という読み方ができます。志望校を決めるときは、学力の位置だけでなく自分の持ち点の形と学校の比率の相性も見ておくことをおすすめします。

秋にやっておく4つのステップ

1. 学科の型を絞る

普通科・専門学科・総合学科のどれで3年間を過ごしたいかを、先に大まかに決めます。大学進学を考えている場合でも、専門学科から進学する道は閉じていません。ただしカリキュラムの重心が違うため、卒業後の選択肢の広がり方は変わります。

2. 通学の現実を確かめる

3年間続くことなので、通学時間と交通手段は無視できない条件です。松山市内であっても、朝の時間帯の所要時間は路線や乗り換えで変わります。可能であれば実際の登校時間帯に一度移動してみることをおすすめします。

3. 選抜タイプとの相性を見る

特色入学者選抜を使うなら、出願資格に間に合うかを秋のうちに確認しておく必要があります。検定の取得は申込から結果まで時間がかかるため、秋以降に思い立っても間に合わないことがあります。一般入学者選抜で勝負するなら、前節の A:B:C 比率を志望校ごとに確かめておきます。

4. 学校を実際に見る

各校の学校説明会や体験入学は夏から秋にかけて実施されることが多く、日程は各校のホームページで公表されます。パンフレットの進学実績だけでは、通学のしやすさや校風、部活動の実際の活動量は分かりません。

数字を使うときの注意

この記事は、資料の年度が2種類混ざっています。特色入学者選抜の募集枠と出願資格は令和9年度(2027年春)入試の公表資料(令和8年5月22日更新)によるものです。一方、学科の構成と A:B:C 比率は令和8年度(2026年春)入試の公表値で、令和9年度の募集要項・実施要項は例年11月頃の公表となるため、この記事の執筆時点ではまだ確定していません。

そしてもう一点、中予地区では高校の再編そのものが進行中です。愛媛県教育委員会「愛媛県県立学校振興計画」(令和5年3月)の前期計画(令和5〜9年度)では、東温高校の総合学科への改編(令和8年度設置)、伊予高校への理数情報科の設置(同)、松山南高校砥部分校のデザイン科内へのゲームクリエーションコース設置(令和7年度)、北条高校の昼間二部定時制・通信制の学校(計画上の仮称は「愛媛風早高校」、正式な校名は北条清新高等学校)への改編などが示されています。この記事で紹介した学科構成も、その途中経過にあたります。再編の全体像は愛媛の県立高校はどう変わるのかで詳しく扱っています。

さらに同計画は、後期計画(令和10〜14年度)の方向性として、砥部分校について「入学生数の増加が見込まれない場合は、伊予高校との統合を検討する」と記しています。その後期計画は現在検討中で、2026年6月の中予地区の地域協議会では砥部分校を単独校とする案が示されたと報じられています(※新聞報道による。県教育委員会の協議会資料は本稿の執筆時点では公表されていません)。いま中1・中2の生徒が受験する頃には、学校の姿が変わっている可能性があります。志望校を長い目で考えるときは、入試制度だけでなく振興計画の動きもあわせて見ておくことをおすすめします。

愛媛県では学校の統合・学科改編が進んでおり、定員・比率・募集枠はいずれも年度によって見直されます。志望校を検討する際は、必ず愛媛県教育委員会が公表する最新の資料そのもので確認してください。塾や進学情報サイトの要約(この記事も含みます)は、あくまで読み方の補助です。

制度そのものの仕組み——二段階選抜の流れや調査書点の計算——については、愛媛の公立高校入試制度内申点はいつから・どう決まるのかで詳しく扱っています。

ソートアップでの取り組み

学習塾ソートアップでは、志望校の相談を「行けるかどうか」だけでなく、その生徒の持ち点の形と各校の選抜方式の相性から一緒に整理しています。調査書点と当日点のどちらが強いかは生徒によって違い、同じ学力でも受ける学校で見通しが変わるためです。

面談では県教育委員会の公表資料を実際に開いて、比率や募集枠を一緒に確認するようにしています。学習塾コースでは、こうした進路の整理と日々の学習設計を並行して行っています。無料体験授業で実際の指導スタイルをご確認いただけます。

よくある質問

松山の高校は、何から決めればよいですか?

まず学科の型(普通科・専門学科・総合学科)を絞ることをおすすめします。学科によってカリキュラムの重心と3年間の時間の使い方が違うためです。そのうえで通学の条件、選抜方式との相性、学校説明会での実際の印象を重ねて判断していく流れが整理しやすいと考えられます。

A:B:C の比率とは何ですか?

愛媛県の県立高校の一般入学者選抜の第2選抜で使われる配分です。A(学力検査)・B(調査書点)・C(調査書の学習記録以外の記録および面接等)を合計500点満点に換算する際の比率で、合計10、Aは3〜6、BとCは2〜4の整数の範囲で学校・学科ごとに定められ、事前に公表されます。

内申点が足りない場合、志望校を下げるしかないのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。令和8年度(2026年春)入試では松山東・松山南(普通・理数)・松山北本校の普通科がA:B:C=6:2:2で、学力検査の比重が高い設計でした。当日点の比重が高い学校では挽回の余地が相対的に大きくなります。ただし比率は年度によって見直され、合否は志願状況にも左右されます。比率だけで判断せず、最新の資料と実際の成績をもとに検討してください。

特色入学者選抜は誰でも受けられますか?

出願資格が各校ごとに定められており、誰でも出願できるわけではありません。令和9年度(2027年春)入試の公表資料では、松山東 普通科は志願動機の明確さ、アドミッション・ポリシー「三立」への理解、基本的生活習慣、学習成績が優秀であることの全てに該当したうえで、特別活動等に継続して取り組みリーダーシップを発揮して優れた成果を上げたか、スポーツ・文化活動で全国大会もしくはそれに準ずる大会等に出場して成果を上げたか、その分野で優れた資質や高い運動能力を有するか、のいずれかが求められています。一方、松山南 本校普通科は第1学年から第3学年の9教科の成績が特に優秀であることに加え、特別活動等での優れた実績とリーダーシップの期待、英検・漢検・数検の準2級以上または同等の資格、県大会ベスト4以上相当の成績もしくは優れた能力と入学後も部活動を続ける意志、のいずれかに該当することが条件です。学校によって条件が大きく異なるため、必ず志望校の公表資料で確認してください。

志望校が再編でなくなることはありますか?

可能性はあります。愛媛県教育委員会「愛媛県県立学校振興計画」(令和5年3月)は令和5年度から令和14年度までの10年計画で、中予地区でも東温高校の総合学科への改編や、北条高校から北条清新高等学校(計画上の仮称は「愛媛風早高校」)への改編などが進んでいます。同計画は後期計画(令和10〜14年度)の方向性として、松山南高校砥部分校について入学生数の増加が見込まれない場合は伊予高校との統合を検討する、とも記しています。後期計画は現在検討中の段階です。中1・中2のうちから志望校を考える際は、入試制度だけでなく振興計画の動きもご確認ください。再編の経緯と基準は別の記事で詳しく扱っています。

最新の入試情報はどこで確認できますか?

愛媛県教育委員会が公表する入学者選抜実施要項・募集要項および特色入学者選抜の各校資料が一次資料です。特色入学者選抜の出願資格・検査項目は入試の前年5月頃(令和9年度入試向けは令和8年5月22日)に、実施要項・募集要項は例年11月頃に公表されます。この記事では、特色選抜の募集枠と出願資格は令和9年度の公表資料を、学科構成とA:B:C比率は令和8年度の公表値を使っています。

高須賀 惇也(たかすか じゅんや)

学習塾ソートアップ 代表・講師。愛媛大学大学院 理工学研究科 博士後期課程在籍(教育工学・数理情報)。2014年2月、松山市内で開業(2025年7月に現在地の松山市東雲町へ移転)。元ソフトウェアエンジニア。現在は松山市東雲町で小1〜高3を個別指導。研究テーマは「生涯を通して関わるAIチューターの数理モデル」。