愛媛の県立高校の再編は、令和5年度から令和14年度までの10年計画「愛媛県県立学校振興計画」を軸に、状況の変化に応じて検討を加えながら進められています。前期計画で決まっている内容と、これから決まる後期計画は分けて読む必要があります。この記事では、中予地区で何が決定済みで何が検討段階なのかを、県教育委員会の公表資料から整理します。
「振興計画」とは何か
愛媛県の県立高校の再編は、愛媛県教育委員会「愛媛県県立学校振興計画」(令和5年3月決定)という10年計画を軸に進められています。計画期間は令和5年度から令和14年度までで、前期計画(令和5〜9年度)と後期計画(令和10〜14年度)に分かれています。前期は地域ごとに具体的な内容が、後期は方向性が大まかに示される、という構成です。
計画には「再編整備基準」が添えられており、学校の規模について次のように定められています。
- 適正規模:1学年3学級〜8学級を基本とする
- 募集停止の基準:3学級以上の学校は、入学生が80人以下の状況が3年続き、その後も増える見込みがない場合に募集停止を行う
- 魅力化推進校:適正規模を下回る学校のうち、同一市町内に県立高校等が1校しかない場合、または複数ある場合で島しょ部にあるか教育委員会が特別に認める場合に、市町や地域から学校の存続のために必要と思われる支援が得られることを条件として、1市町につき1校に限り認定できる。認定されると募集停止の基準が緩和され、入学生が30人以下の状況が3年続き、その後も増える見込みがない場合に募集停止となる(弓削高校と松山北高校中島分校は離島の通学環境を考慮し、20人未満の状況が3年続いた場合)
核心:再編は公表された基準と10年計画を軸に、中学生の進路状況や地域・社会の変化に応じて適宜検討を加えながら進められます。基準と計画が公表されている分、保護者や生徒の側も同じ資料を見て見通しを立てることができます。
なぜ再編が必要とされているのか
計画が最初に挙げる課題は、生徒数の減少と学校の小規模化です。同計画によれば、愛媛県の全日制県立高校等の在籍生徒数は平成2年度の約5万3千人から令和3年度の約2万4千人へ、約3万人減少しました(中等教育学校前期課程を除く)。一方で学校数は57校から55校へ2校しか減っておらず、結果として1校あたりの規模が小さくなっている、という説明です。
地区ごとの状況も数字で示されています。中予地区(松山・伊予・上浮穴)の過去5年間の平均志願倍率は0.99倍で県内では最も高いものの、学校・学科によっては大幅な定員割れが続いている、とされています。地区全体としては、定員に対して志願者がほぼ同数という水準です。
中予で決まっていること
前期計画(令和5〜9年度)で示された中予地区の主な内容は次のとおりです。
- 東温高校:普通科(6学級)と商業科(2学級)を、進学を重視した総合学科(9学級)に改編(令和8年度設置)。令和9年度入試の資料では、文理探究・英語理解・社会共創・生活科学・福祉サービス・スポーツ健康・情報マネジメントの各系列が示されています(計画時点の名称から一部変わっています)
- 伊予高校:理数情報科を設置(令和8年度)。普通科内に教員養成コースを設け、芸術クリエーションコースを拡充
- 松山南高校砥部分校:デザイン科内にゲームクリエーションコース(仮称)を設置(令和7年度)。民間企業との連携によるICT人材の育成を図る
- 北条高校:全日制課程を改編し、昼間二部定時制課程と通信制課程を併置した学校を設置(令和8年度)。計画では「愛媛風早高校(仮称)」と記されていましたが、正式な校名は北条清新高等学校です(令和8年度の募集要項に記載)。小規模校への授業配信拠点としてのセンター機能も整備されます
- 松山西中等教育学校:後期課程に国際コースを設置(令和8年度)
- 中島分校・上浮穴高校:魅力化推進校の基準を適用
松山東・松山北・松山中央・松山工業・松山商業の全日制については、前期計画の期間中は学級減を行わず現状維持とされています。
読み違えやすい点:計画には「松山商業高校を松山南高校に統合する」「松山工業高校の工業科2学科を1学科に集約する」という記述もありますが、これは定時制課程についての内容です(同計画の定時制・通信制の節)。全日制の松山商業は前期計画の表で9学級のまま示されています。ここは混同されやすいので注意が必要です。
砥部分校に起きたこと——計画が変わった一例
計画案は、地域から提出された具体案を踏まえて、正式決定までに修正されることがあります。松山南高校砥部分校の経緯は、その具体例です。
愛媛県教育委員会「愛媛県県立学校振興計画(現案)からの変更点」によれば、当初の案では砥部分校は伊予高校と統合することとされ、伊予高校に普通科5学級・理数情報科1学級に加えてデザイン科1学級を置く形が想定されていました。
これに対し、地域説明会やパブリックコメントの過程で「砥部分校存続の会」等から存続案が提出されます。同資料が挙げるその内容は、砥部町による遠距離通学生への家賃補助と全国募集のための活動費補助、地域住民による親元を離れて暮らす生徒の生活見守り、広告デザイン企業による校内へのサテライトオフィス開設とゲームクリエーションコースでの専門技術指導などでした。
県教育委員会はこの案の実現性と将来性を精査し、「学校の発展可能性に期待が持て、これから高校進学を目指す子どもたちにとってもプラスになる内容であると十分に判断できる」として計画案を修正しました。決まったのは、前期計画期間中(令和5〜9年度)は伊予高校との統合を猶予し、存続案の進捗と成果を見守ること、そしてデザイン科の定員を2学級80人に増員することでした。
ただし同資料は、この変更が直ちに魅力化推進校に認定するものではないこと、存続案が実現できない、あるいは志願者の増加が見込まれない場合は、後期計画段階(令和10〜14年度)において伊予高校との統合を改めて検討することも明記しています。振興計画本体の後期計画の方向性にも、同じ趣旨が記されています。
そして2026年6月8日、後期計画の策定に向けた中予地区の地域協議会で、砥部分校を「単独校」とする案が示されたと報じられました(※新聞報道による。県教育委員会の当日資料は本稿の執筆時点では公表されていません)。実現すれば分校ではなく独立した学校になります。公式の計画に「独立」が書かれていたことはこれまでなく、当初案は統合、決定した計画は統合の猶予でした。後期計画はまだ検討段階であり、決定ではない点にご注意ください。
保護者・生徒はどう受け止めればよいか
学校名ではなく「学科の型」で考える
再編で変わりやすいのは学校の枠組みや学科の構成です。東温高校のように普通科・商業科が総合学科になる例もあります。志望校を早い段階から一つに絞るより、どの学科の型で3年間を過ごしたいかを軸にしておくと、計画が動いても選択肢を組み替えやすくなります。
数字は「募集停止の基準」と合わせて読む
基準が公表されている以上、状況は誰でも同じ土俵で確認できます。見るのは志願者数ではなく入学生数で、80人以下(魅力化推進校は30人以下、弓削高校と松山北高校中島分校は20人未満)の状態が3年続き、その後も増える見込みがない場合という条件が付いています。個別の情報に接したときは、この基準と実際の数字を照らし合わせて読むことをおすすめします。
統合等が決まった場合の進め方
同計画では、統合等の対象となった学校のまとまりごとに、市町行政関係者・学校関係者・地域住民などで構成する準備委員会を設置し、具体的な準備を進めるとされています。設置学科やコース、統合校名も準備委員会での協議を経て正式に決定される、と記されています。在学中の生徒への具体的な影響については、学校や県教育委員会からの案内で確認してください。
情報の追い方
振興計画の本体・地区別の計画・再編整備基準は、愛媛県教育委員会のウェブサイトで公開されています。後期計画は今後、地域協議会での議論を経て示される見込みです。報道が先行することもあるため、決定なのか検討段階の案なのかを毎回確かめることをおすすめします。
入試への影響という観点
再編は入試にも直結します。学科が新設されれば選抜方法や配点の比率もその学科について定められますし、統合や改編は募集定員そのものを変えます。愛媛県の県立高校入試では、第2選抜で使うA:B:Cの比率が学校・学科ごとに事前公表される仕組みになっているため、学科が変われば比率も改めて示されることになります。志望校選びの具体的な観点は松山の高校をどう選ぶかで、入試制度そのものは愛媛の公立高校入試制度で扱っています。
ソートアップでの取り組み
学習塾ソートアップでは、進路の面談で愛媛県教育委員会の公表資料を実際に開いて、募集定員や比率、振興計画の内容を一緒に確認するようにしています。再編に関する話題は伝聞で広がりやすく、どこまでが決定でどこからが検討段階なのかが混ざりやすいためです。
中1・中2のうちは志望校を一つに固定せず、学科の型と学習の積み上げを並行して考える方針をとっています。学習塾コースでは、日々の学習設計とあわせて進路の情報整理も行っています。無料体験授業で実際の指導スタイルをご確認いただけます。
よくある質問
愛媛県の高校再編は、いつまで続く計画ですか?
愛媛県教育委員会「愛媛県県立学校振興計画」の期間は令和5年度から令和14年度までの10年間で、前期計画(令和5〜9年度)と後期計画(令和10〜14年度)に分かれています。前期計画は地域ごとに具体的な内容が示されており、後期計画は方向性が示されたうえで、現在その具体化に向けた検討が進められている段階です。
どういう基準で学校の募集停止が決まるのですか?
同計画の再編整備基準では、1学年3学級〜8学級を適正規模とし、3学級以上の学校については入学生が80人以下の状況が3年続き、その後も増える見込みがない場合に募集停止を行うとされています。魅力化推進校は、適正規模を下回る学校のうち、同一市町内に県立高校等が1校しかない場合や、複数ある場合で島しょ部にあるか教育委員会が特別に認める場合に、市町や地域から学校の存続のために必要と思われる支援が得られることを条件として、1市町1校に限り認定できるものです。認定されると基準が緩和され、入学生が30人以下の状況が3年続き、その後も増える見込みがない場合に募集停止となります。弓削高校と松山北高校中島分校は離島の通学環境を考慮し、20人未満の状況が3年続いた場合とされています。
松山南高校砥部分校はなくなるのですか?
現時点で決まっているのは、前期計画期間中(令和5〜9年度)は伊予高校との統合を猶予し、存続案の進捗と成果を見守るということです。同時に、存続案が実現できない、あるいは志願者の増加が見込まれない場合は後期計画段階で統合を改めて検討する、とも明記されています。2026年6月には砥部分校を単独校とする案が中予地区の地域協議会で示されたと報じられていますが、これは検討段階の案であり決定ではありません。
東温高校が総合学科になったのはなぜですか?
同計画では、生徒の個性を生かした主体的な教育を一層推進するため、多様な類型を備えている普通科と商業科のこれまでの成果を踏まえ、進学を重視した総合学科に改編し、文理探究、社会共創、スポーツ、情報マネジメントなどの系列を設置して特色化を図る、と説明されています。令和8年度に設置されました。なお系列の名称は計画時点の例示であり、令和9年度入試の資料では文理探究・英語理解・社会共創・生活科学・福祉サービス・スポーツ健康・情報マネジメントの7系列が示されています。
再編の情報はどこで確認すればよいですか?
愛媛県教育委員会のウェブサイトで、振興計画の本体、地区別の計画、再編整備基準が公開されています。報道が先行することもあるため、内容が正式な決定なのか、地域協議会などで示された検討段階の案なのかを確かめることをおすすめします。入試の定員や選抜方法については、毎年公表される入学者選抜実施要項・募集要項が一次資料です。